ふと思い出した話がある。使い捨てマスクにまつわる話だ。
2020年のある時期に、複数人で会合することがあり、僕も参加した。場所はいわゆる昔ながらの居酒屋。
2020年といえば、全世界でコロナ禍と呼ばれる時期に入った頃で、できるだけ自宅で過ごすことを推奨されていた時期だ。そして、使い捨てマスク不足が顕著で、日本全国民に布マスクが配られた時期でもあった。
先に述べた会合は、参加者もさることながら、店の方も本当に良くしてくださり、和気あいあいと数時間が過ぎ、解散することになった。店主の方に各々お礼を述べ、会計をしたあと、店を出ようとすると、店主の方が個包装のマスクを各人に無償でくださった。
ただでさえ外出自粛で売上が落ち込んでいるだろうに、僕らにそこまでしてくださるのか、と純粋に感動したし、感銘を受けた。
2025年現在でこそ、マスク一枚でそんな、という感覚だとは思うが、2020年当時はまさに死活問題になるほどマスク不足だったんだよね。再び深く店主の方にお礼をして、帰路に着く。
非常事態宣言下の世の中で、なんとも心温まった日だった。
その当時、僕自身が持っていたマスクの在庫は、コロナ禍前に大量購入したぶんがかなり残っていて、そこまで困っていなかったのもあり、頂いたマスクは、以来自宅玄関のマスク置き場にそっと置いてある。
いつもは見えないけど、周辺のものを少しどけるとそのマスクが今もある。
どこかのタイミングで使うのも全然ありではあるんだけど、一方で、あの時期特有の雰囲気と、その会合のことやお店のこと、はたまた店主の方のことが思い出せるので、この先もずっとそこに置いておく気がする。
あの日と同じ、温かい気持ちになれるんだよね。
Tetsuya Tanaka

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