“The Album”配信から約1ヶ月が経とうとしていますが、楽しんで頂けていればとても嬉しいです。

さて、”The Album”での過去への旅行には少し続きがありました。この「ポートレイト」というシングルは、いわば”The Album”のエピローグ。


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“The Album”に入れるか迷っていたんですが、同作品と時系列が少し異なるのと、フォーカスしている対象が違ったので、別にシングルとしてリリースすることにしました。

ぶっちゃけ、ものすごく、ものすごーく個人的な作品です。そして、何より驚くのは10分以上というボリューム。シングルですよ?えへへ。

この曲は、2年前に自分の母親にプレゼントした曲で、「家族一人一人のポートレートを撮るかのように」18歳までを過ごした20数年前の実家での日常を切り取りながら書いていった曲です。よろしければ歌詞ならびに後述のエピソードもご覧くださいませ。

「ポートレイト」歌詞
ポートレイト
Written, composed, arranged, mixed and mastered by Tetsuya Tanaka

1.
あの頃の部屋に 飾ってあった
無数のポスターと 雑誌の写真
あの人を目指し がむしゃらに鳴らす
ギターについた ピックの跡

あの頃の部屋に 置いてあった
CDラジカセ ブラウン管テレビ
セピア色にあせた 写真のように
今もたまに 思い出します

(ch)愚かなほどに 真っ直ぐな思い
時に周りを かえりみずに
ただがむしゃらに またひたすらに
少しずつ夢を たぐり寄せてた

夢を掴んで 二十年が経ち
分かれ道の先を 見つめるとき
あの頃支えてくれた 家族の
姿をそっと 思い出します


2.
毎日手を引き 送ってくれた
幼い日々の あの保育園
時にあなたに 泣きついた
行きたくないと 駄々をこねました

思春期になると 素直になれず
優しいあなたに きつく当たりました
何を言うでも なく変わらず
あなたのままで 接してくれました

(ch)無償の愛を 貫けるほど
人は強く できていません
でもあなたは あの頃すでに
貫き通して 守ってくれました

一人で暮らし 始めたある日
あなたからの手紙が 届きました
心配そうな顔が 浮かんできました
そんな日が続いていく そう思っていました

二年目に手紙を 受け取った時
あなたの字が たよりなく泳いでました
それから数年 経った頃に
あなたは 寝たきりに なってしまいました

(ch)きっとあなたは 気付いてたんでしょう
少しずつ変わる 自分自身に
僕のことが 分からなくなっても
あなたに会える時間は 宝物でした

あなたが旅立ち 10数年
あなたの話を 時にしていると
あなたの草履を 見つけました
幼い日の思い出が 蘇りました


3.
あなたの車で 出かけるとき
何を話すでもなく わくわくしてました
あなたの横顔 見るたびに
何をするでもなく 安心してました

毎週通った スイミングスクール
その後買ってくれた アメリカンドッグ
今でも食べると その時の事を
思い出し そのたび 笑顔になれるんです

(ch)口数少なく 優しいあなた
いつも家族を 守ってくれました
勝手な僕に あえて厳しく
してくれたのも あなたでした

僕が病気と 聞くとすぐさま
車で迎えに きてくれました
大人になっても 変わらぬ横顔
でも少し 白髪が増えていました

(間奏)

あなたの病気が 分かってから
親子で行った あのスイミングスクール
あの時 交わした 思い出話
幼い頃と変わらぬ 笑顔の写真

(ch)あの頃のように 僕が今度は
あなたを連れて ドライブに行こう
少しだけれど みんなで行けた
一生の思い出に なりました

あなたが使った あの部屋は
あの頃と違って 寒いままです
あなたが遺した 大事なものは
もう少し そのまま 置いておきます


4.
あなたの背中を ついて行った
いつもの買い物 駅からすぐの店
あの頃小さかった 僕はあなたの
すぐ近くで ずっとべったりでした

太陽のような あなたがいたから
町を出てからも まっすぐ進めました
ぶつかり合うことも 多かったけど
笑いあえる日々が 待っていました

(ch)何年も何年も 家族を支え
何度も何度も 救われました
結婚式で ふと気付きました
あなたの背中が 小さくなったこと

どれだけ苦労を かけただろう
どれだけわかって くれただろう
未熟な夢追い人を 諭して
支えてくれたのは あなたでした

幼き日々の 頃の思い出
この頃たびたび 話しますね
キラキラした声で 笑い語る
あなたの様子が 嬉しいんです

(Ch)マメなあなたからの 返事が
途絶えることが 想像できません
ありきたりでは あるけれども
これから もっと連絡するからね


5.
気付けば 離れて暮らす日々が
あの頃よりも 多くなりました
しばらくぶりに 帰るわが町
ずいぶんと 静かになってしまいました

あの頃の夢を たまに見ます
少し景色は 違うんだけれど
あの頃の家族で 過ごせたから
そのおかげで 僕はここにいられるんです

(ch)
いつになく 苦しい そんな時は
また思い出す こともあるでしょう
何十年が経ち 今度は僕が
語り伝えて いきましょう

(ch)
もう戻らない 知っているんです
もう還らない 分かっているんです
でもたまに あの頃に 甘えたいんです
明日からまた 歩き出すため


6.
あの店 この店 閉まっていきます
あの道は ずいぶん 綺麗になっていきます
あの人が 亡くなり あの方は 別の町へ
僕の知っている すがたが消えてゆく

あなたが手を引いて 連れてってくれた
あの道 今度また 歩いてみます
次に帰った時の 楽しみ
あの頃の僕も 駆けてくるでしょう

(ch)
もう戻らない 知っているんです
もう還らない 分かっているんです
でもたまに あの頃に 甘えたいんです
明日からまた一歩 踏み出すため


©2019 Tetsuya Tanaka and Curry ‘n’ Groove Studio

※曲の冒頭と最後に入っているレコードプレイヤーの音に起因するノイズは、制作者が意図的に入れているものです。

※曲の後半部分で、使用機材の関係でやむを得なく歪みが生じていますが、通常の再生環境ではスピーカーやイヤホンに悪影響はありません。

「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
VOCALOID and VOCALO are trademarks of Yamaha Corporation.

「結月ゆかり」は株式会社バンピーファクトリーの登録商標です。
Copyright©2005-2015 AHS Co. Ltd.
Copyright©2015 VOCALOMAKETS Powered by Bumpy Factory Corporation.


少し唐突な話ではありますが。

2016年から2017年、僕はとある理由で音楽と距離を置かざるを得なくなりました。心が追い付かなかったんです。一時期、DAWを開くことさえ出来なかった。好きだったゲームですらやる気が起きなかった時期もあった。幸い、2017年になると少しずつ回復し、再び仕事としていくつかのプロジェクトに関わらせて頂き始めました。

ようやく回復しつつあった2017年のある日、ふと気づくと実家を離れて20年経ったことに気づきました。10代までを過ごした日々の割合のほうが少なくなったんです。でも、幼い頃から10代の終わりまでの家の景色や、当時の家族との思い出は鮮明に記憶に残っているんですよね。

そんな家族との思い出の景色をそのまま表現したいと思って、この曲を書きました。一人暮らしを始める前までの実家の景色、1980年代から1990年代終わり頃の家族の姿を描いた曲です。平成初期から中期のあの頃に健在だった家族の姿。今もよく話す母との思い出。変わらない景色、変わっていく景色と人。無情な時間。

僕が多感な時期を過ごしたのは平成がほとんどですが、家族は昭和の激動期を生きた人たち。フォークソングがポップスだった頃、バリバリの働き盛りだった人たちです。あの頃の音楽機器といえばレコードプレイヤーってことで、その音を入れてあります。

2017年にこの曲が出来たちょうどその頃は母の誕生日が近かったのもあって、彼女への誕生日プレゼントにしました。

この曲ができた時、2つの驚きがありました。1つは、こんなにダイレクトな作品が書けたこと。2つ目は、過去の体験をストレートに表現し、VOCALOID™ に歌ってもらうのは、単に機械の声の歌なんじゃなくて、その人の物語を聞き手側で補完、想像するんだな、と感じたんです。これがのちに “The Album” 制作の道しるべとなったのは言うまでもありません。

ちなみに「ポートレイト」でフィーチャーしたボーカロイドは、VOCALOID4用ライブラリの「結月ゆかり 純」(AH-Software)。リリースにあたってのエディットはVocaloid5エディターに乗せて行いました。


この曲は、気づいたら各種サービスのライブラリーに追加されていた、くらいにしておきたい。でも、この記事に気づいてくださったあなたが聴いてくださる、そして広めて頂けるのなら、それほど嬉しいことはありません。

“The Album”以上にパーソナルな作品ではありますが、あなたの家族の顔をも思い出すようなきっかけになれば幸いです。

“The Album”のエピローグとしてのこの「ポートレイト」。平成が去っていく前に最後に残しておきたかったこと。この作品をもって10代後半までへの最後のお別れとします。”The Album”にも込めた共通テーマとともに。

「明日からまた一歩 踏み出すため」

Tetsuya Tanaka と申します。記事を気に入って頂けた方は、上にあるハートボタンを押して頂けると嬉しいです。プロフィール:レコーディングディレクター、作編曲家、トラックメーカーのかたわら、レースシミュレーター・フライトシミュレーターのWeb管理、日英翻訳、ドローン操縦士をやっています。滋賀出身横浜在住。WindowsとStudioOne使い / Spotifyでアルバム配信中です。僕のセレクトしたプレイリストも随時更新中してます。 => Tetsuya Tanaka on Spotify