お知らせ

2019年3月29日

上記のSpotify他、以下の音楽サービスにて配信開始しました。各サービスをクリック(タップ)すると視聴ページに移動します。

今作のテーマは過去の自分

2019年、実に8年ぶりとなる自身名義の作品集 “The Album” を作りました。

このアルバムでテーマにしたのは、自分の中学から高校時代。時期にすると、1990年代中頃のこと。音楽家としてのキャリアに繋がる一歩を含む、とても重要な出来事があった時期のことを記しておきたかったので作りました。

言うなれば、音楽キャリアを始める前、まだ少し幼かった哲也少年があの頃にやり残したことを今の自分がやりきった、そんな作品です。

多くの方が、学生時代に原体験をするように、僕も10代の中頃、今につながる大事な出来事がいくつもありました。

音楽のキャリアを始めて以降、あえてこの時期のことは伏せていました。ただ、時間が経つにつれ、徐々に愛おしいとさえ思える思い出として解釈出来るようになって、やっぱりなくてはならない時間だったなと実感したんです。

そして、今思い出しておかないと、もっと忘れてしまうと直感的に思いました。事実、この作品を作るにあたって、一番思い出したかったことが何も思い出せなかった。

そういう背景もあり、まだきっちり感覚として残っている当時の記憶のかけらを、当時一番聴いていた音楽をトレースして、自分が今できる作品に仕上げました。

平成の終わりの今、自分が多感だった平成初期の頃を振り返る作品集を作れたことは、とても大事な記憶となることでしょう。これだけ詳細に思い出し、作品として記録したのは、明日からまた一歩踏み出すため。

この作品を聴いて、1990年代当時の香りや景色を思い浮かべて頂けたならとても幸いです。


曲目紹介

※タイトルをクリックすると歌詞をご覧いただけます。

Rewind the Clock (Instrumental)

過去へのいざないをテーマにしたインストです。

過去のことを思い出す時、夢を見ている感覚と近いと感じるんです。ふわっと始まってふわっと終わる。走馬灯のごとく景色が移ることもあれば、その時間にタイムスリップしたかのごとくゆっくりと思いだすこともある。でも、時間の流れは一定ってことで、バックにずっと時計の針っぽい音を鳴らしています。

 

席がえ

学生の頃の席がえってものすごいドラマが詰まってましたよね。気になるあの子が、あの人が隣に来てくれたらもうその期間は毎日楽しい。

この曲は、あの頃に隣同士だった人がもし自分のことを想ってくれていたら、という視点で書いた女の子目線の曲です。このあとの曲「かた恋」と共通の時系列で物語が展開します。それぞれ共通のキーワードが出てきますが、女の子と男の子で少しずつ解釈が違うのも見て頂けると嬉しいです。

制作裏話とディテール

この曲のキーポイントは、とてもシンプルな8ビートとテンポです。このビートは、僕が中学生の頃に聴いていたヒットチャートの音楽に必ずと言っていいほど使われていたもの。無意識に影響を受けたものとして一番大きいでしょう。

そして、当時はもう減り始めていましたが、’80年代から’90年代初頭の曲の特徴として、間奏部分にコーラスが入るというのも重要な青春時代へのオマージュ。

テンポについては、作り始めた当初、107か109でとても迷っていました。それ以下だとダレるし、それ以上だと思っているニュアンスからは離れてしまう。しばらくこの2つのテンポを行ったり来たりしていましたが、最終的に109にして楽曲のテーマでもある「明日もキミと会えるのが楽しみ」というニュアンスを優先させました。

歌詞に出てくる表現がとても明確なのと、具体的な描写がほとんどなのもあって、ビートやグルーヴもクリアにしました。

 

かた恋

とりわけ中学までは想いを寄せる人にどうやって伝えたらいいか分からなかったなぁ。想いを伝えられずに大きな後悔をした片思いを含むこの曲は、「席がえ」と同じ時系列にいる作品で、こちらは男の子が主人公。

中学で大きな後悔をしたからこそ、高校以降では自分で前に進むことを覚えました。ある意味でゲートウェイだった中学時代。でも好きな相手を想う時ってとても楽しく、切なかった。嫌なことを全て忘れられるくらい、夢中になった片思いの力はすごかったなぁ。

制作裏話とディテール

「席がえ」のテンポよりもゆったりしたバラード。これは、男の子目線の解釈を優先させてこうしました。片思いした相手を思ってた時って、いつも頭で鳴ってたのはバラードなんですよね。

前アルバム”home”では’Moment’と’To-Funk’で同じメロディを持つ曲をやりましたが、共通の歌詞を持つ曲の対比って前からやってみたかったことで、これは歌ものでないと出来ないことでもあります。

上の説明にもありますが、「席がえ」と兄弟曲となる所以は、キーやコード進行にもあります。サビの進行は「席がえ」と途中まで全く同じです。あと、使う楽器も前曲とあまり変化させていません。こうすることで同じ時系列の感覚を曲間で共通化させたかったんですよね。

こちらの味付けとしては、恋に恋する男の子の夢見心地な部分を残したかったので、「かた恋」と比べるとふわっとしたタイムにしています。

 

Unfinished Song

どうしてもこの作品集に入れたかったテーマの一つが、初めて書いたオリジナル曲’Oh!My Angel’のことです。

実はこの曲、僕の手元には残っていません。恐らく、音源が入ったカセットテープを引っ越し等で間違ったケースに入れたまま処分したのかなぁ。自分の頭の中には、コード進行とメロディは残っているものの、どんな歌詞だったかというのはもう思い出せず。

ただ、原曲がないということも、この’Unfinished-‘を作るきっかけにもなり、あの時の自分を思い出すきっかけにもなりました。

まっすぐな想いをあの人に届けるため、気持ちをダイレクトに音に変えて重ねていった当時の感覚を、なるべくそのまま今の自分が思う形にしました。

制作裏話とディテール

以前から僕の作品を聴いて頂いていた方にはとても意外だったのがこの曲だったのではないでしょうか。

とりわけ最近の作品では全くやってないとってもロックなビート。1980年代後半のバンドブームを台頭した、当時の自分が影響を受けた各グループのビートを意識して作りました。どれか1つというわけではなく、当時に聴いていたものをミックスした感じ。どうせやるならと、今の自分がやらないことを全て詰め込んだのがこの曲。結果的にこの作品集の中で一番のお気に入りになりました。

思えば、ベースのピック弾きも10数年ぶりにちゃんとやりましたしね。めちゃくちゃ楽しかったです。

この曲で重視したのは、何よりも疾走感。初めての曲を書いた時、走り抜けたように出来上がった感覚がありました。あの人の事以外何も考えてなかったあの一途さは、振り返るととてもまぶしい。ミストーンと取れる箇所も、疾走感が出ていればそのまま生かしてあります。

気をつけた点は、ハードロックやメタル寄りになりすぎないこと。あくまでJ-Rockで止めたい。なので、所謂向こうのジャンルがやるような音作りは一切しておらず、なるべく各素材を活かす方向に振りました。

 

リプライズ

高校生活では、人生のブレイクスルーを多く体験しました。自分の特技は誇っていいんだ、と思えたのが高校1年の頃。それによって、受け身だった自分から180度考えが変わりました。そこから全力で走り抜けることが出来た3年間。そうやって変わることが出来たのは、僕を認めてくれて、労ってくれて、そして守ってくれた高校時代のクラスメイトのおかげです。

リプライズというのは、音楽用語で「反復」を意味します。3年間ずっと楽しかった毎日の繰り返し。変わらないように見えて、少しずつ変化があって意味がある。そして、その繰り返しと変化は無情にも時間をどんどん進めていく。楽しいけど過ぎて欲しくない…そんな景色と時間の移り変わりを、当時に一番影響を受けた音楽に乗せて表現してみました。

制作裏話とディテール

意外さで言うと’Unfinished-‘と双璧を成すのがこの曲ではないでしょうか。とりわけ、大学時代以降は小室哲哉/浅倉大介両大先生の音楽とはあえて距離を取って、ルーツ音楽の探求に入りましたしね。

ただ、高校生当時のヒットチャートの常連であったこのビートも、今の自分を形成している大事な要素。テーマとなっている高校時代はTM Networkから小室さんのプロデュース作品まで多く聴き倒しましたし、シンセサイザーで数多くコピーもして、高校生当時の文化祭でも多くの曲をカバーしました。

このアルバムの中で、最もスムーズにアレンジが進んだのもこの曲です。何も考えずに作るとこうなるんです。やっぱり僕の屋台骨の一つなんだなぁ。

 

my memory -20 Years After-

アルバムの締めは、この作品集を作るきっかけになった曲で、アルバムで唯一過去の楽曲のリメイク。高校最後の文化祭でプレイした曲です。これは、初版制作の1996年当時からプロの音楽家になったらリメイクすると決めていた曲。タイミング的に今が一番いいんだろうな、とアルバムを作り始めました。

当時は、周りの友人たちへ高校3年間の感謝と、未来への不安を書いた曲でしたが、20数年が経った今の自分が感じることをそのまま歌詞にしました。

あの頃からの付き合いの友人も多くいるなか、あの頃は想像でしかなかった景色も実際に見れた。目標も達成できた。そして、あの頃よりも少し人生の終わりが身近になってきた今だから見える景色がある。

歌詞は大幅に変わりましたが、歌詞の譜割りと曲の構成は、全てそのまま残しました。あの頃の自分と今の自分の架け橋になるような感じがして。

制作裏話とディテール

この曲の原曲…すなわち高校時代のバージョンは、テンポが10から13ほど速いんです。しかしそれだと、この歌詞が「乗らない」。僕自身もドラムをプレイする人なので、色々探るうちにこのテンポに落ち着きました。

この曲ができた当時は、文化祭でプレイするために、全てを打ち込みで済ませるために、ギターパートをシーケンスとして入れなければならなかったり、とにかくバック演奏がぐっちゃぐちゃだったんですが、本当はこういうことがやりたかったってことをまとめることができました。

曲の構成、譜割りは当時のままなのですが、ビートに関しては今の自分を一番表すものにしたかった。リラックスしつつもパリっとしたグルーヴ。

また、歌詞は最後の最後まで推敲していました。ただ、このアルバムのテーマでもある「明日からまた一歩踏み出すため」というワードが出てきてからは、各セクションの配置がスムーズにいきました。20数年前の原曲のフレーズも使いつつ、今の自分が表したいこともふんだんに詰め込んだ歌詞になりました。

ちなみに、この曲の歌詞の最終バージョンを作っている時、高校時代の担任の先生から連絡があったんです。そんな偶然もあって、このアルバムを作るのはある種運命だったんだな、と感じました。

このアルバム中唯一のリメイクですが、オリジナル音源は制作の初めに一度聴いたのみで、それ以降はあえて聴き返さずにアレンジしました。必要以上に聴いちゃうと原曲のイメージがこびりついてしまうので。


クレジット

All the songs were written by Tetsuya Tanka

Programmed, guirats, bass, synthesizer bass, keyboards, organs, arranged, mixed and finalized by Tetsuya Tanaka

Album Artwork by Tetsuya Tanaka

Mash-Up of past original songs :
‘Keep on my dream’ Chorus part(Chorus A part of ‘Unfinished Song’),
‘Oh!My Angel’ Chorus part(Guitar Solo A part of ‘Unfinished Song’),
‘My Pure’ Pre-chorus part(Bridge part of ‘リプライズ’)

 

終わりに

ここまで読んでくださってありがとうございます。引き続き、この作品を楽しんで頂ければとてもうれしく思います。


この作品でやっておきたかったことが、先述した「過去作品のリメイク」「10代に見ていた景色や感じていた時間の感覚を、曲で表現すること」「1990年代に活動・活躍してらっしゃった方への自分なりのトリビュート」この3つです。

今回の作品集を作るにあたって、プロの音楽家になって以来初めてと言っていいほど10代のことを事細かに思い出しました。

ただ、冒頭にも書きましたが、10代のことで忘れたくても忘れられないことがある一方で、思い出したくても思い出せないこともありました。当然覚えていると思っていた自分もいたので、ショックでしたね。こうして少しずつ記憶はなくなっていくんだろうなと感じました。

その時にやりたかったことを表現したアルバム”home”は、いずれ帰る場所という意味もあり、何度も行ったり来たり出来る、自分の代名詞としての作品です。対して、今作”The Album”は、決して戻れない場所と時間という無情さが根底にあります。

以降の自分が、10代の頃やそれ以前をテーマにしたアルバムという形の作品集を作ることはもうないでしょう。これからもっと忘れていくと思うし、そういう中で作る物はきっと嘘になってしまう。楽しいことはもちろん、辛いことや悲しかったこと、悔やんだことがまだ感覚として残っている今だから、このタイミングできっちりあの頃のことを思い出して、音楽という形に残せて良かった。特に、リメイクでもある’my memory’なんかは、きっちり学生時代にピリオドを打てた感覚もあります。

そうそう。歌もののアルバムというのも初めてです。そして、VOCALOID™を自分の作品に採用したのも初めてなんです。

このパーソナルな体験を含んだ物語は、あくまで傍観者・ストーリーテラーとして歌ってほしかったのが、ボーカロイド採用の一番の理由です。そして、ボーカロイドに歌ってもらったからこそ、やりたいことが際限なく出来た。改めてYAMAHAならびに Vocaloid5 開発の技術者の方々に感謝です。

 

とても個人的な話になりますが、今作が過去をテーマにした作品集ってことで、どのくらい10代の自分の作品を覚えてるかというと、重要なターニングポイントになった曲は全部覚えています。楽譜やコード譜など何も見なくても弾けるし、音源も聴かなくてもプレイできる。なので、原曲がなかった’Unfinished-‘もそこまで心配の種になりませんでした。自分の作品だけでなく、例えば、高校最後の文化祭でやった他のカバー曲も、構成まできっちり覚えています。

これだけ多く昔のことを事細かに思い出しましたが、あの頃に戻りたいと思ったことはないんです。起こったことには必ず意味がある。そこから何を得るかは全て自分次第ですから。あの頃に蒔いた種というのは、いろんな形で今に繋がっています。そして、この振り返りは「明日からまた一歩踏み出すため」のもの。

さて、しばしまた思い出にふたをしましょう。


アルバム制作の後日談をブログ記事にアップしていきます。使用機材やモチーフとなった曲や時代背景なども触れていきますので、よろしければそちらもご覧くださいませ。


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VOCALOID and VOCALO are trademarks of Yamaha Corporation.

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