ここからしばらくの記事では、自身2作目のアルバム “The Album” の曲ごとの裏話をしていこうと思います。

初回の今回は「席がえ」。このアルバムのリードトラックです。使用機材も踏まえつつ、音楽的なバックグラウンドを掘り下げていきます。

背景

’80年代後期から’90年代前半の歌謡曲からニューミュージック、J-Popへの黎明期の音楽に中学時代は一番影響を受けたし、いっぱいコピーもしました。

海外のファーストコール1)この曲orアルバムならこの人に頼もうとプロデューサーやディレクターなど制作サイドが最初に電話をするミュージシャンやクリエイターの意。海外の一部の国ではミュージシャンはランク付けされており、そのような国では一般的にSSクラスからSクラスのミュージシャンを指す。2019年現在ではSNSのメッセージ機能やテキストでのオファーも多くなったが、呼び方として根強く残っている。のミュージシャンたちも多くこの時期にリリースされた日本のポップスに参加していました。当時はそんなことはつゆ知らず無意識に聴いていたんですが、記憶の奥底には残っているんですねぇ。

ドラムのビートで意識したのはSteve Gadd。大好きなんです。ガッドさん。このトラックでは、特に’70年代後半から’80年代にかけてのガッドさんを意識しました。エレピはJoe Sampleの影響を受けた8ビートリフが主体になっています。年代は少し新し目ではありますが、そうそうこのビートとグルーブ!というまさにガッドさんなプレイがありましたので、どうぞ。

海外の制作チームに所属していた際には、このミュージシャンがこういうアイドルorアーティストのバックをやるとこうなるんじゃないか?的な遊びから作っていたことも多く、この曲に関しても「’80年代後半のアイドルの楽曲をCrusadersにいたメンバーがやったら」というモチーフでアレンジしました。2)リファレンスの出し方に関して、日本と海外の一部では全く違います。日本のシーンが「この曲と似たテイストで作って」なのに対して、海外では「この曲の源流のシーンはこの辺とあの辺だから、じゃああの辺のあの人のテイストを濃いめで」といった感じ。曲を真似るのか、バックグラウンドを真似るのか、この違いは大きいと思います。

使用機材とアレンジ

そこに絡むギター。使用したギターはBOSSAのPUセレクター搭載の形式不明機。HHH配列にさせて、フロントPUを鳴らしています。プレイはDavid T. Walkerさんから影響を受けたプレイ。デビTさんも大好きなギタリストの一人で、’90年代当時はDreams Come Trueの作品やライブを中心に、日本のポップスにも数多く参加されてました。

使用したVSTiは、ドラムがXLN AudioのAddictive Drums2。キットはVintage Dryというものです。シンセベースはSpectrasonicsのTrillian。ギターにかましたVSTはPositive GridのBIAS FX。エレピはPresonus Studio One4に付属しているVSTiの1つ、Presence XTのプリセットを少しいじった程度。サビのバックで何となく鳴っているマリンバも、Presense XTのもの。シンセソロは同じくStudio One4付属のMai Tai。オルガンはNative InstrumentsのKOMPLETEシリーズに付属するVintage OrganのM3。

というように、楽器構成もとにかく必要最小限です。あとね、Studio One 4付属のVSTiが良い。特にキーボードプレイヤーでもある自分的に、Presence XTは思い通りに鳴ることが多いです。

各VSTiのトラックディレイ(タイム調整)は、だいたい最大17msまでを使って調整してます。こういったシンプルなトラックはタイム調整が鍵。0msの頭合わせだと、どうしてものっぺりしますので。3)意外とこれを見逃してらっしゃる方は多いです。

ボカロと歌詞について

ボーカロイドの設定は、Vocaloid5付属の女性ボーカルKaoriのCuteパラメーターを上げめにして、ちょっと幼い感じを出せるようにしました。また、Vocaloid5になってからVSTi扱いが出来るようになって、だいぶ勝手が良くなりましたよね。

また、間奏でたびたび出てくる英詞は、英語ライブラリAmyを使いました。Kaoriに声色を合わせて、Cute寄りにしています。何と歌っているかについては、このエピソードトークが全て出揃った時にでも明かしましょう。しばしお待ちを。

歌詞について。

この曲だけでなく、アルバム4曲めくらいまでに通じているんですが、字余りを出さないことを心がけました。’90年代初期あたりまでの日本のポップスやロックって、その音符内できっちり言葉が完結しているものが多いんです。なので、ドラフトから無駄だと思われる言葉を削ぎ落として削ぎ落としていきました。

席がえ 歌詞
Written, Composed, Arranged by Tetsuya Tanaka

あしたも この席で キミと授業 見える横顔
それだけで 自転車 こぐ足が 少し早まる

同じ班のキミ 隣の席のキミ
「消しゴム貸して」なんて 言い合ってたよね
すぐ近くのキミ  友だちの一人
「また明日」 なんてまた 言えると思ってた

社会見学 みんなの企画
終わると 二人で 笑い合った

あの日ね 私はね キミのこと 気になり始めた
もっとね 知りたいの キミのこと 言えないけれど
あしたも この席で キミと授業 のぞく横顔
それだけで 自転車 こぐ足が 少し早まる

友だちと話す 休み時間のキミ
少し離れただけなのに 長い10分間
私を見てくれない 席に戻ったキミ
「ねえなんで こっち向かないの?」なんて 言えたらいいのに

明日は席替え もう一度となりは
キミがいい 話せなくても いいから

あの日ね 私とね 笑顔で話してくれたキミ
もっとね そばにいて 恥ずかしくて 言えないけど
あしたも あさっても となりがいい ただそれだけ
どうして この胸は こんなにも 苦しいのかな

運命の くじ引き 思わずキミの席を聞いた
やっぱり そうだよね そんなうまくはいかない
机を 運ぶ時 ふと落ちる キミの教科書
「ありがとう」 素っ気なく 言うキミも 大好きだった

あれから 一言も 話せずに 別のクラスで
すれ違う 意識して 近づけないままの 卒業
今ごろ あの席の キミは 元気でいてくれる?
「ありがとう」 あの頃の 切ない 私の1ページ

©2019 Tetsuya Tanaka, Curry ‘n’ Groove Studio

てな感じで、”The Album”の残るトラックの裏話も追々アップしていこうと思います。アルバム共々お楽しみいただければ幸いでございます。


”The Album”エピソードトークは、ブログ内タグ Deep-Story でまとめてご覧いただけます。ちょっと遡りたい方や初めてご覧になる方は、太字Deep-Storyをタップ、クリックしてみてくださいませ。

Tetsuya Tanaka と申します。記事を気に入って頂けた方は、上にあるハートボタンを押して頂けると嬉しいです。プロフィール:レコーディングディレクター、作編曲家、トラックメーカーのかたわら、レースシミュレーター・フライトシミュレーターのWeb管理、日英翻訳、ドローン操縦士をやっています。滋賀出身横浜在住。WindowsとStudioOne使い / Spotifyでアルバム配信中です。僕のセレクトしたプレイリストも随時更新中してます。 => Tetsuya Tanaka on Spotify

注釈   [ + ]

1. この曲orアルバムならこの人に頼もうとプロデューサーやディレクターなど制作サイドが最初に電話をするミュージシャンやクリエイターの意。海外の一部の国ではミュージシャンはランク付けされており、そのような国では一般的にSSクラスからSクラスのミュージシャンを指す。2019年現在ではSNSのメッセージ機能やテキストでのオファーも多くなったが、呼び方として根強く残っている。
2. リファレンスの出し方に関して、日本と海外の一部では全く違います。日本のシーンが「この曲と似たテイストで作って」なのに対して、海外では「この曲の源流のシーンはこの辺とあの辺だから、じゃああの辺のあの人のテイストを濃いめで」といった感じ。曲を真似るのか、バックグラウンドを真似るのか、この違いは大きいと思います。
3. 意外とこれを見逃してらっしゃる方は多いです。