ラリーGBが終了。2001年以来の英国人ウィナーである、エルフィン・エバンスのラリーGB優勝、そして彼のWRCの初優勝という、イベント自体も輝かしい結果に終わったが、セバスチャン・オジェが世界ラリー選手権5連覇、そしてM-Sportがプライベートチームとして初めてマニュファクチャラータイトルを決めた。

振り返れば、昨年末の電撃的なVWの撤退によりシートを失うことになったオジェが加入することになったのがM-Sport。シーズン中、彼は何度も「僕らはプライベートチームだから」という旨の発言をしていた通り、公式にメーカーがサポートしない唯一のチームだ。そんな彼らに2つの栄冠。心から嬉しい…!

プライベートチームとメーカーの公式サポートを受けたチームは、実は月とスッポンほど差がある。分かりやすい所で財政面が一番の差。ドライバー、コ・ドライバーへの契約金をはじめ、イベントごとのホスピタリティやグッズの充実などは、正式なメーカーマニュファクチャラーだとよく見るが、M-Sportに関しては、本当に小規模なものである。昨年末の時点では、トヨタとM-Sportが実質の選択肢だった。トヨタはメーカーマニュファクチャラー。しかし、彼はM-Sportを選んだ。シーズン前のインタビューでしきりに「チャレンジ」という言葉を繰り返していた彼。これには試練という意味も含まれていたんだろうな。

WRCに参戦した歴代のフランス人ドライバーの中で一番彼が好きだ。何でもオープンに話し、奥歯に物が挟まったような発言もないに等しい、見ていて非常に気持ちのいいオジェ。面白いのが、彼はメンタルコーチは雇っておらず、フィジカルコーチのみのドライバーということ。現代のモータースポーツのトップカテゴリーでは比較的珍しいのだ。有名なところでは、トヨタのラトバラなんかはメンタルコーチに助言を求めることが多いという。つけるつけないは人それぞれなのだが、各人でその影響の割合が違う。どれが良い悪いではなく、興味深い部分なんだなぁ。

FIAに対してもオジェは臆することなく、ルールの改正を提案している。選手権首位があまりに不利な状況はアンフェアだ、と。ただ、そんななか、今シーズンは特に致命的なミスやノーポイントのラウンドが少なかったのが彼。初日や2日目を終えた時点で5位あたりにいることも少なくなかったけど、その後はきっちり走り、ポディウムを獲得するというまさに速いだけではない、作戦と戦略と速さを組み合わせた王者の走りをしてのけた。

しかも、それを成し遂げたのが今まで乗ったことのなかった車、チームでというのがすごい。VWでタイトルを獲った時、そりゃ1年準備してればねー、なんて人もいた。そんな方々は、ほとんど準備期間がなかった今シーズンはどう説明するのかしらね。言うは易く行うは難し、まさにそのものだと思う。

今年のラリーGB終了後、オジェがタイトルを獲得して泣いているという姿が映像にあったが、彼がトップキャリアで戦うようになってからそういった場面は恐らく初めてではなかろうか。本当に印象的だった。周りが思う以上に今シーズンは特別で大変な状況だったんだろう。

今シーズンは、レギュレーションも車の規定も大きく変わって、全員、全チームがゼロからのスタートだった。そして、序盤から波乱に次ぐ波乱。シーズンを通して何人もの勝者が生まれて、様々なチームが表彰台に上がった。勿論、日本人としてはトヨタの健闘も素晴らしいと思う。トミ・マキネンがチーム代表としてWRCに戻ってきたことも、往年のファンの一人として嬉しかった。来年はM-Sportからオット・タナクが移籍する。もっと楽しませてくれよ、と期待したい。

シーズンは残り1戦。早いもんだね。オーストラリアは、両タイトルは決まっているものの、選手権2位を決める大事なラウンドでもある。チャンスのあるドライバーは全開でいくだろう。最終戦もまた楽しみだね。

Tetsuya Tanaka(田中哲也)

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